背負い子(背負い紐)

種別・分類 とる・つくる・運ぶ(生産・運搬用具)
アイヌ語名 ニイェシケ(タ
ni-e-sike(tar)
和名 背負い子(背負い紐)
サイズ(mm) 縦843 横379 幅175 タラ・長4540
材料・材質 自然木製・樹皮縄・背負縄
製作者 萱野茂、タラ:木幡はる
収集(製作)時期 未確認
収集(製作)地域 二風谷
説明1(使用場所・方法) 「アイヌはこの背負い縄に荷物をしばりつけ、これを額にかけて背負います。そして山の中を歩くときは、突然熊に出会っても首をうしろへひと振りするだけで背中の荷物をうしろへ落とし、即座に身軽になれるように常に心がけていました。そうすれば、手に残った弓矢や槍で熊と戦うことも、身をひるがえして逃げることもできるわけです。これも常に危険と背中合わせの生活を営んでいた、狩猟民族であるアイヌの身を守るための一つの知恵です。(文献1-P125)」▼「この背負い縄で薪などをまとめてしばって背負ったり、小さなトマやポンイサッケキ(小さい簀)に荷物を包んでからしばって背負ったり、あるいは後にのべるニイェシケ(背負い子)につけて背負ったりするのですが、タラで荷物をしばることをスッパカラといいます。これはタラで荷をしばるときだけに用いられる言葉で、しばり方は左手でタリペを持ち、右手で荷の下をまわしたタラクをつかみ、荷の上で左手側の太い縄に二回ぐるぐるとまわしてから、右手側の細い縄にからめて手前にしめつけるだけで、縄のはじを引くと簡単に荷物をほどくことができます。(文献1-P125)」▼このものではないが、ニイェシケは昭和21~22(1946~1947)年頃、茂の父親の貝沢清太郎が、魚捕りに背負っていって使っていた。宿主別まで行って、マスやサケを捕っていた。ニイェシケに一斗缶を付けて魚を入れ、帰りはイカダを組んで乗ってくる。昭和23(1948)年そのイカダの木を梁に使った家(チセ?)が現在も建っている。▼ニイェシケは昭和30年頃まで使われていた。萱野茂がヤマゴをやっていた時にはリュックサックであった。しかし案内人の坂本三太郎は背負子を使っていた。▼清太郎とテツアチャポ(貝沢おろあくのの夫)が樺太へ熊を捕りに行った時、テツアチャポはニイェシケを頭に下げて背負っていた。熊が現れた時、清太郎は肩で背負っていたのでもたもたしていたら、後ろからテツアチャポが鉄砲で熊を撃ったという。頭に下げているとすぐに下ろすことができる。▼「ニイェシケはちょっと見ると日本本土の背負い子に似た背負い道具で、山の狩り小屋までの行き帰りには必要な道具を全部これにしばりつけて背負っていきました。(文献1-P127)」▼「日本本土の背負い子の場合には肩で背負うようになっており、なかにはさらに胸のところでしばるようになっているものさえありますが、このニイエシケは背負い紐を額にかけて背負います。この背負い方ですと、背負い縄に腕を通していないので、山の中で不意に熊と出会ったりしても、首をうしろへ一振りするだけで額の縄がはずれ、荷物がうしろへ落ち、すぐに手で持った弓矢や槍で熊に立ち向かうことができるのです。日本ふうに肩で背負うと、とっさの場合逃げることができません。これも狩猟民族の厳しい生活の中から生まれた知恵かと思います。(文献1-P127)」▼「この背負い縄で薪などをまとめてしばって背負ったり、小さなトマやポンイサッケキ(小さい簀)に荷物を包んでからしばって背負ったり、あるいは後にのべるニイェシケ(背負い子)につけて背負ったりするのですが、タラで荷物をしばることをスッパカラといいます。これはタラで荷をしばるときだけに用いられる言葉で、しばり方は左手でタリペを持ち、右手で荷の下をまわしたタラクをつかみ、荷の上で左手側の太い縄に二回ぐるぐるとまわしてから、右手側の細い縄にからめて手前にしめつけるだけで、縄のはじを引くと簡単に荷物をほどくことができます。(文献1-P125)」▼
説明2(製作方法) 「タラは長さ四メートルくらいの丈夫な編み紐で、まん中の額に当てるところをタリペといって、指をそろえた大人の手の幅くらいに広くしてあります。タリペから先の細い部分はタラクといい、この部分はしだいに細くなるように編んであります。(文献1-P125)」▼「普通は、木灰で煮たしなの木の皮を使ってこの縄を編みますが、オッカヨタラと呼ばれる男性用の背貞い縄は、しなの皮よりも強いつるうめもどきの皮や特別丈夫なハイキナ(いら草)またはカパイ(背の低いいら草)の繊維を使って、丈夫に長く編みます。編みはじめはまん中のタリペの部分から編んでいきます。十八本の糸で約十センチ幅のものを、刀の下げ帯と同じ編み方で十五センチくらいの長さに編み、そこから先は十八本の糸を七本、四本、七本というように三つに分けて、おのおの十五センチくらいの長さ編み下げます。それから下の方は糸数を十二本に減らし、しだいに細くなるようにしながら最後まで編みあげます。残り半分も同じように編みます。(文献1-P125)」▼「これは枝つきの自然木を利用して作ります。上から三十五センチくらい下がったところに枝のつけ根の部分がくるようにして、全長約九十センチの長さの木を二本切ってきます。皮をきれいにはぎとり、枝のつけ根のすぐ下と、下端から約十センチくらい上がったところの二か所に、長さ約三十五センチのサキリ(横棒)をつけます。これは、背負う人の背幅に合わせて作るもので、下の方のサキリをやや長めにしておくと背中に当たる部分にハラキカ(しな縄)を巻きつけていくときにぴっちり締まります。ハラキカは使っているうちにゆるむことがないように、下から一段ごとにたて木に一巻きずつ締めつけながら、上のサキリのところまで巻きあげます。このようにしておくと、荷物を背負ったときに直接荷物が背中に当たらないし、背中の風通しがよくて汗をかかずにすむので、たくさん荷物を背負うには背負いやすいものでした。(文献1-P127)」▼「ドスナラ、シナノキ(文献2-P123)」
博物館資料No. NAH-M-19910496-19910510
収蔵場所 平取町立二風谷アイヌ文化博物館
文化財指定 国指定重要有形民俗文化財


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