種別・分類 | とる・つくる・運ぶ(生産・運搬用具) |
アイヌ語名 | クワリ ku-ari |
和名 | 仕掛け弓(狩猟用具) |
サイズ(mm) | 最大幅1230 長754 高826 |
材料・材質 | 罠猟/熊猟/木製 |
製作者 | 萱野茂 |
収集(製作)時期 | 1977/昭和52年頃か |
収集(製作)地域 | 二風谷 |
説明1(使用場所・方法) | 「クワリというのはク=弓、アリ=置く、つまり仕掛けておく弓のことです。これはいちばん多く熊をとることができる狩猟用具であり、アイヌたちが頼りにしていたものでありました。(文献1-P151)」▼「熊の足跡を見つけたり、熊の姿をちらりとでも見たら、熊がどうしても通らなければならない細いやせ尾根や熊の通り道のそばの草むらにクワリを仕掛け、マカニッアイをつがえておきます。(文献1-P152)」▼ |
説明2(製作方法) | 「Y字型棒、弓、矢、ヘチャウエニ、糸、房目の板(文献2-P128)」▼「このクワリに仕掛けておく矢はマカニッアイといって、遠くにいる獲物を射るのではなく、目の前にいる熊に射こまれる先なので、矢羽も軽さも必要なく、かわりに重く丈夫に作らなければなりません。それで、木の中でもいちばん堅くて重いとされているさびた(のりうつぎ)の木で作ります。(文献1-P152)」▼「クワリのすえ方は、直径七センチくらいの先端がY字型になった棒を土に打ちこみ、Y字状の上の部分に、人間でいうと左腕の役目をするしっかりした棒を水平に置いてしばりつけます。この腕木の先の方にアイチセと呼ぶ、がんび(うだいかんば)の木の皮で作った細長い筒をしばりつけます。アイチセとはアイ=矢、チセ=家ということで、弓を仕掛けておいて雨が降った場合、矢尻に塗った毒が流されるのを防ぐと同時に、矢のねらいを定めて、横へそれるのを防ぐ役目をします。これはがん、びの皮を火にあぶって柔らかくし、それを矢が入るくらいの太さに丸めて、糸でぐるぐる巻いてそのまま冷やして作った堅い筒で、かなり激しく雨が降っても中へ水がしみこんでいくようなことはありません。一方で手ごろなおんこ(いちい)の木を切って弓を作っておきます。カリンパウンクと違って丸木のままでよいのですが、この方が木が太いので、どうしても一人で曲げることができないときは、二股になった木の片方の枝を途中で切っておいて、股のところに弓のはしをはさみ、体で弓を曲げてつるを張ります。アイチセをしばりつけた腕木の先端に弓をかませて弓づるを引き、そこにマカニッアイ(仕掛け矢)をつがえ、へチャウェニで押さえます。へチャウェニの先にはノプカと呼ぶ延べ糸がかけてあり、熊の通る道に張ってあります。ノプカはクカと同じように、カパイという背丈の低いいらくさの繊維をよって作った糸でできるだけ細くより、熊の嗅覚を迷わすために熊の脂を塗っておきます。これでノプカが引っぱられるとヘチャウェニがほごれ、矢が発射されることになります。このノプカは、人間への安全を考えて、ヘチャウェニのところで糸に延び(遊び)を加えてあります。延びとして加える糸の長さは、糸のはしを左手の人差し指と親指でつまみ、親指のうしろを通して親指側から手首の内側をぐるりとまわし、元のところに戻った長さ(約三十三センチ)で、その分をヘチャウェニのところにはさんでおきます。この延びを加えることにより、万一人間が歩いていて足が糸にふれて矢が発射されたとしても、矢は大腿部のうしろ側を飛び去るわけです。また、この延びは、熊であれば頭を下げて歩くので、首のあたりが糸にふれて矢が発射されたとき、俗にいう肋の三枚目に当たるように計算されているものです。熊の足跡によって糸の高さを決めますが、足跡が大きくても体の小さな熊や、逆に足跡は小さいのに体のずいぶん大きな熊もいるので、土の柔らかいところで足跡の窪み具合によって判断するのがよいとされていました。しかし、糸の高さの一応の目安として、男が四つん這いになり、たなごころを土にぴったりつけて腕をたてた腕のつけ根までの高さが標準とされていました。(文献1-P152.153)」▼ |
博物館資料No. | NAH-M-19910061 |
収蔵場所 | 平取町立二風谷アイヌ文化博物館 |
文化財指定 | 国指定重要有形民俗文化財 |