平取町立二風谷アイヌ文化博物館で展示しているアイヌ民族の生活文化に関する資料は、民俗文化研究家の故・萱野茂氏によって収集されたコレクションを基礎としています。
自らもアイヌ民族の血を継ぐ萱野茂氏は、平取町・二風谷の地で生活しながら、1953年ごろから半世紀にわたる歳月をかけてアイヌ民族の伝統的な民具を収集しました。
平取町および沙流川流域には、古来人々が居住し、旧石器時代からアイヌ文化期にかけての遺跡が点在しています。萱野氏の収集資料は、二風谷を中心とした沙流川流域のアイヌの古老たちによる生活文化に関する伝承や関連情報が豊富にともなっていることが特徴です。収集が始められた1950年代初頭は、日本社会全体の高度経済成長とともにアイヌの生活文化の変容も急速に進む状況にありました。とはいえ、伝統的な生活を深く知る明治生まれの古老たちが当時はまだ健在でもあったのです。萱野氏は彼らから直接伝承を受け継ぎながら、アイヌの生活用具を収集し、また製作しました。そのため、萱野氏のコレクションには実際に使用できる日常の暮らしの道具がまとまりとして揃っています。
萱野氏の収集資料のうち、1,121点が「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」として2002年に文化庁より重要有形民俗文化財の指定を受けました。そのうち、当館では919点を所蔵しています。