IMPORTANT INTANGIBLE FOLK-CULTURAL PROPERTY重要有形民俗文化財

ARTICLES TO TELL THE AINU TRADITIONAL CULTUREアイヌ伝統文化を伝えるものたち

重要有形民俗文化財

 

 

【重要有形民族文化財指定資料の解説】
 平取町二風谷アイヌ文化博物館(公立)と萱野茂二風谷アイヌ資料館(私立)が所蔵する資料の内1,121点が2002年(平成14年)2月12日、国の重要有形民俗文化財の指定を受けました(同日付文部科学大臣告示第12号)。指定資料群の公式名称は「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具※コレクション」です。
※コレクションという用語は、資料の集まり、資料群という意味で使っています。
 平成9年(1997年)、「アイヌ文化の振興並びにアイヌ伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(アイヌ文化振興法)が制定され、それ以降、伝統を継承しながら今日的な環境のもとで文化振興をはかり、あわせてアイヌ民族に関する正しい理解を広めようという社会的な要請がいっそう強まってきており、さまざまな施策・事業が積極的に展開されるようになってきています。
 平取町では、町内の二風谷地区を中心に、アイヌの有形・無形の文化的遺産の保存伝承が図られるとともに、郷土の誇るべき貴重な文化財として二つのミュージアム、町立博物館と萱野資料館において展示公開されてきました。「アイヌ文化振興法」施行や、国連が提唱する「世界の先住民のための国際10年」(1994年~2004年)のもとで多方面からの関心が高まる中、保存活用のための検討作業と系統的な調査研究が着手され継続されてきましたが、こうした取り組みが今回の国による重要有形民俗文化財指定として実を結びました。
【地域の文化的環境】
 平取町を貫流する日高一の長流、沙流川(さるがわ)の流域に暮らすアイヌの人たちはサルンクル(沙流の人)と称され、北海道内におけるアイヌ民族の中でも1つの有力な文化圏を形成してきました。アイヌ民族にかかわる遺跡・史跡・伝説の地等が数多く分布し、古くからの風習を今に伝える人の多いアイヌコタンが集中している地域として有名で、海外からも含めたくさんの研究者が注目し訪れてきました。
 今も民族的伝統を継承していこうという気風の強い土地柄で、とりわけ二風谷地区は文化活動の中心的な地域となっていて、工芸・民芸や民族舞踊、アイヌ語などを受け継ぎながら、現代生活の中にも活かしていこうという試みが活溌に取り組まれています。
【指定資料の活用に向けて】
 今日、二風谷が文化伝承のための活動拠点と考えられるようになった背景には、アイヌプリ(アイヌ的風習・伝統)を絶やすまいとしてきた人々と、その活動を支援してきた人々の、地道な努力の積み重ねがありました。
 今後も、地域に根ざした文化伝統が保持され受け継がれていく上で、またアイヌ文化を活用し振興する活動が進展していくに際しても、二風谷の両館に所蔵されている本資料群は、将来に渡っていっそう重要性を増すことでしょう。

SHIGERU KAYANO MR. INTRODUCTION萱野 茂 氏 紹介

萱野 茂

 博物館所蔵資料の内、重要有形民俗文化財「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」指定資料は、故萱野茂氏(1926-2006)が昭和28年頃から半世紀以上かけて収集したアイヌコレクションです。
 この資料群の特徴は、第一に制作や使用法などの伝承記録が豊富で由来が比較的明確であること、第二に生活用具が網羅的に収集されていて伝統的な暮らしの全体像や地域的特徴を知ることができることです。
氏はアイヌ文化継承にかかる数多くの著作を残していますが、中でも『アイヌの民具』(1978)は、製作法の解説や実測図、写真等の詳細が掲載され、地域のアイヌ工芸振興に大きく寄与するものとなっています。また自らも、妻れい子氏とともに生活用具作りの指導者として活躍してきました。2001年には論文「アイヌ民族における神送りの研究~沙流川流域を中心に~」により博士号を取得し、長年の活動の功績が評価され北海道文化賞、北海道功労賞、平取町名誉町民賞なども受賞しています。

 

The exhibitions of the important tangible folk-cultural properties in this museum, “Collection of the Ainu utensils in Nibutani of Hokkaido and the surrounding area”, are collected by Mr. Shigeru Kayano (1926-2006) from 1950’s to 2000’s.
The feature of this collection is that it has extensive record of making and how to use crafts. The origin of each craft is relatively clear. Secondary, the utensils are collected comprehensively. By seeing them, you will understand the whole image of a traditional life and the regional characteristics.
Mr. Kayano had left many books on the succession of Ainu culture. Among those books, “The Ainu Crafts” (1978) includes precise data of photographs, measured drawings, and the comments on the methods of making crafts. The book contributes the promotion of the local Ainu crafts. Together with his wife, Mr. Kayano played an active role as a leader of artisans. He had gained a doctorate by submitting a thesis “Research in Ainu ceremony sending back god’s spirit –focusing on the cases of the Saru Valley”. Many years of his achievement were evaluated, and he had received the Hokkaido Cultural Prize, the Hokkaido Distinguished Service Award, and the Honorary Towner of Biratori.

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